バイオマス産業都市となった静岡県掛川市に迫る

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片山能志晴さん、松永真也

Qバイオマス産業都市に応募された理由は?

片山:当市には、市域の43%を占める森林が広がり、未利用間伐材等の豊富な資源があります。これらを上手く活用する中で、CO₂の排出削減や新たな産業の創出による地域活性化が図れないかという考えから応募に至りました。また、種々の理由で人の手が入らない森林が少なくないという現状から、このままですと荒廃の恐れもありますので、林業に関してもよい影響がでることを期待した部分もあります。

Q選定されたポイントは?

松永:実際に選定理由は明かされてはいません。今まで大規模な木質バイオマスの発電を行っている事例は多くありましたが、その全てが順調にいっている訳ではないようです。
当市では、小型木質バイオマスガス化発電設備による発電事業や熱利用事業を考えているため、実現性があると評価頂いたように思います。また、多くの市民が参加・参画できる構想であり、市民のみならず、民間企業や公共施設等、いろんな所に好影響をもたらす循環となっていることも含め、選定されたのだと思います。

Q掛川市のバイオマス産業都市構想とは?

片山当市の構想では、市民が木遣い(森林の恵みを享受し資源として活用するなど)するまちをコンセプトに、地域で循環する産業を生み出し、市民が協働して森林に関わり、美しく風格ある山林を維持していくことを将来像としています。本構想では、6つのプロジェクトを掲げていますが、木質バイオマス燃料生産事業がその基幹事業です。その中に、協働による仕組みとして「木の駅事業」を組み込み、掛川らしさを出したいと考えています。「木の駅」事業とは、林地残材を地域住民の力で搬出し、木材の集荷場となる「木の駅事業」に集める事業です。当市は小規模林家が多く、また林業従事者も少ないことから、登録したボランティア等により、林地残材の一部を山から搬出することで、少しでも多くの資源を確保したいと考えています。搬出された間伐材等は、市内でチップ化し、他のプロジェクトの燃料として使用します。スマートコミュニティ街区(再生エネルギーの積極的な活用や電力需給を全体としてコントロールし省エネ化を図る街区)においては、小型木質バイオマスガス化発電設備を導入し、街区内に電力と冷暖房給湯用の熱を供給するプロジェクトを考えています。

松永:その他に木質バイオマス燃料を利用するため、リゾート施設等へバイオマスボイラーを導入し、温泉施設の湯沸しや宿泊施設の冷暖房への活用を計画しています。木質バイオマスボイラーは、ただ導入するだけでなく、「見せる」工夫をすることで本取組の視察等による集客増大効果を期待します。

また、バイオマスボイラーの熱を利用した鶏糞堆肥の乾燥・造粒事業も計画しています。堆肥を乾燥・造粒することで保存性と取扱い性を改善し、集中する施肥時期の需要に対応することができます。
廃棄物系の事業としては、紙おむつのリサイクルプロジェクトを計画しています。紙おむつは現状ごみ処理施設で焼却した際の熱を発電や温水などに再利用(サーマルリサイクル)していますが、焼却時のCO₂排出量を低減し省資源化を図るため、パルプなど原料としての再利用(アップワードリサイクル)や紙おむつへの再生(水平リサイクルなどのマテリアルリサイクル)も視野に研究を進めていきたいと考えています。このプロジェクトは、課題も多く時間を要すると思われますので、参考となる他市の事例や核となる技術の確立状況を見極めながら長期的なスパンで取り組んでいきます。

Q現在の進行状況は?

片山:国が描くバイオマス産業都市や地域資源を活かした経済性が確保された循環型システムの構築というのはとても大きな話で、我々地方都市がすぐさま実現することは難しく、できることは限られています。ですから、当市では、将来目指す姿を念頭に置きながら、実現可能なところから着実に進めていく姿勢でいます。先に説明したプロジェクトも5~10年での実現を考えています。本構想は、木質バイオマスが中心ですので、その基幹事業となる燃料製造とそこに供給される木材を集める仕組みを構築すること、そして、そこに木の駅事業を上手く組込むことに今は取り組んでいます。

Q掛川市が目指す姿は?

松永:当市では、2040年時点の人口を12万人に戻すという目標を立てています。その目標を実現させるためには、環境・教育・文化が充実し、誰もが住みたくなる魅力ある街にしていかなければなりません。したがって、市民や企業等が環境保全活動を行いながら、地域のバイオマス資源を活用した産業を創出することで新たに雇用を生み出し、人の流れを作ることを考えています。

Q市民が取り組むべきことは?

片山:まずは、森林の恵みを認識して頂きたいと考えます。森林維持の取組に関心をもったり、森林をフィールドとした体験活動に参加したり、木の駅事業へ参画する等、より多くの方に関わりを持って頂くのが理想であり、願望です。森林税や基金の創出ということも検討していますが、そうした間接的な支援でも良いと思いますし、来年度からは木質ペレットストーブ等の機器導入に対して補助金を交付しますので、燃料として消費するということも良いことと思います。

Qこれからの課題は?

片山:まず大きな課題としては、安定的に木質チップ等の燃料を生産・供給するために、材料となる木材を効率良く山から搬出し、必要となる量を確保することです。そのためには、森林組合や林業従事者と連携して、事業を進めていく必要があります。また、林家の方だけでなく、街に暮らす人、市南部の海近辺で暮らす人々にも、関わりをもって頂く仕組み作りが重要と考えています。(敬称略)

掛川市バイオマス産業都市構想