生物の命を奪う海洋汚染~人間の不十分な廃棄物管理が生態系を脅かす~

水中ウミガメ

海洋汚染の現状

地球表面の7割にも及ぶ青い海は、豊かな生物の多様性を生み、私たちの食生活を支えるだけではなく、気候の調整や水質を浄化する力を持っています。しかし、その力には限界があり、一度汚れた海を元通りの青い海にすることは容易ではありません。 日本の周辺海域における油や有害液体物質の海上への排出、廃船等廃棄物の不法投棄等による海洋汚染は、依然として後を絶たない状況にあり、海中のバクテリアが汚染物質を分解しても追い付かないほど、地球の海は汚れてきています。

海洋汚染の原因

海洋汚染の原因として、「国連海洋法条約」では、次のように分類しています。1つ目は、河川、パイプラインなどを通じて川に流れ込む工場や家庭からの汚染物によるものなど陸からの汚染があります。2つ目は、海底資源探査や沿岸域の開発などの活動による生態系の破壊、汚染物質の海への流入などです。3つ目は、投棄による汚染です。4つ目は、船舶の運行に伴って生じる油、有害液体物質、廃物などの排出による汚染です。5つ目は、大気汚染物質が雨などとともに海洋に達して生じる汚染などが挙げられています。また、タンカー事故や戦争も大きな海洋汚染の原因と考えられます。

海洋汚染による海や人間への影響

代表的な水質汚染の影響には、公害があります。過去には、汚染水を飲んでしまったり、体内に吸収してしまったりすることによって水俣病やイタイイタイ病などの被害が起こっています。海に流出する有害な化学物質は、食物連鎖を通して濃縮されながら、生物の体内に蓄積されていきます。そのため、生態系のピラミッドの一番上にいる人間ほど、高濃度の有害物質を取り込むことになります。 私たちが出す生活排水には多くの有機物が含まれており、その多くは下水処理場で取り除かれますが、海に流出した有機物は海水を富栄養化し、植物プランクトンの大発により赤潮を招きます。プランクトンは、魚のえらに詰まったり、海水中の酸素を減らしたりし、魚介類の大量死を引き起こすことがあります。また、海流が滞ることにも繋がり、自然の浄化機能が上手く働かなくなる場合があります。そのため、漁業にも大きなダメージを与えます。

ごみによる生物への悪影響

海洋汚染の原因の大半を占めているのは、陸上での不十分な廃棄物管理により海洋に投棄されたプラスチック類、発泡スチロール、プラスチック製品の中間材料であるレジンペレットなどが海鳥や海洋生物の体内に入る被害があります。海には、大きさ5mm以下のプラスチックいわゆる“マイクロプラスチック”が大量に漂っており、重さにして27万トンとなります。 “マイクロプラスチック”は、海水中の油に溶けやすい有害物質を吸着させる特徴を持ち、100万倍に濃縮させるという研究結果も出ており、生態系への影響が懸念され始めています。生物の中には人工のごみとエサの区別ができずに、間違えてプラスチックを飲み込んでしまうものもおり、こうした誤飲・誤食を繰り返す生物は、ごみが胃などの消化器に溜まり続け、エサを食べる事ができなくなり、死んでしまう場合があります。マイクロプラスチックの問題は、世界的課題だと指摘され、日本の環境省も大規模調査を開始しています。海洋汚染は、さまざまなところで生物に影響を与えているのが現状です。また、生き物の中には、好奇心やごみの陰に集まる魚を食べようと近づき、ごみが体の一部にひっかかってしまう危険もあります。人間と違って一度ひっかかったごみを器用に取り外すのは難しく命を落とす生き物もいます。

物質別汚染確認件数の推移

海洋生物の減少

人間活動によって引き起こされている現在の生物の絶滅は、一年間に4万種程度が絶滅しているといわれています。生物多様性が豊かとされる沿岸域の生態系が人間活動により大きな影響を受け、損失の危機にあることが指摘されています。 海の中だけでなく、砂浜についても河川や海の砂利等の採取や河川上流部の整備等による土砂供給の減少、沿岸の構造物による漂砂システムの変化などの影響を受け、海岸侵食が進んでいます。また、大型の海藻が密生した海中林などが著しく衰退する磯焼けなどの様々な生態系の変化やサンゴの白化現象などもあります。 このような砂浜の減少や環境の悪化、水質汚濁等により、アサリ類、ハマグリ類その他生活の一部を浅海域に依存する鳥類・魚介類等の個体数の減少が指摘されています。

海洋汚染に伴い、わたしたちの身近の生物にはどのような被害が起こり、被害を減らすために私たちはどのような対処をしていくべきなのでしょうか。特集2でアカウミガメの保護活動をする御前崎市に取材をしてきました。