マイクロプラスチック問題解決のための調査

焼津大崩海岸に打ち寄せるプラスチックごみ

東海大学准教授海洋学部海洋地球科学科博士坂本泉

東海大学海洋学部では何をしているのか?

坂本:東海大学では海洋地質研究室において、1)海底に眠っている熱水鉱床等の鉱物資源・エネルギー資源の探査や、2)沿岸域に分布している活断層等の分布や活動履歴、3)2011年東北大震災における海底環境変化把握について取組んでいます。また、2016年からは静岡市の海洋文化都市構想に協力し、駿河湾の海洋環境を含めた総合海洋研究を行っており、この中でMPの分布や量の把握のための観測手法の確立に取組んでいます。

プラごみとMPの被害は?

坂本:深海魚のミズウオを例に挙げます。ミズウオは水深1000-1500mに住む深海魚ですが、駿河湾の場合、強い季節風の後安倍川・清水の海岸にうち上がります。ミズウオは大きな口を有しており、何でも丸呑みしてしまうため、腹の中からはレジ袋、マヨネーズの容器のようなものが出てきます。経験上、打ち上げられるミズウオの7割にプラごみが観察されています。(※図1)深海というおおよそ私たちの住む環境から離れている場においても生態系に影響を与えていることは確かです。
 MP自体は我々に直接被害を及ぼすわけではありません。しかしMPは、波や紫外線を受け粉々になることで表面積が膨大になり、有害物質である環境ホルモンが付着しやすくなります。MPに付着した環境ホルモンは、海中を浮遊または海底に堆積する過程で、食物連鎖に取り入れられ生物濃縮されます。環境ホルモンの摂取によって、メスに性転換する魚類など生殖器官や生体に異常が発生する可能性が報告されています。

問題解決のためにしていることは?

坂本:まずはMPに関して何処にどの位あるのか?を調査しなければなりません。当大学では海洋域のプラごみ問題をテーマに、大学での研究とともに地域ぐるみでビーチコーミング活動(海岸漂着物の収集・観察)をしています。
1.現地調査手法の確立
-海洋に関連するMP調査方法を検討-
 ①海岸(※図2)
 駿河湾の西海岸域(御前崎~清水)で、海水が打ち寄せる海岸において、砂礫の分布とともに堆積物中のプラごみやMPを観察し海岸域の特徴を調べています。
 ②海域
 清水港内においては海面付近・中層・海底においてプランクトンネットや採泥器を用いてMPの量を調べています。これまでの結果、港内ではプラごみの量も多いですが、港外へ向かうにつれ少なくなって行く事や、早さの違う海流がぶつかり合う潮目にもプラごみがよく溜まっていることが判りました。
 ③海洋生物
 海洋生物の胃内容物を観察、ごみ物質の確認・サンプリングを行い、生態系への影響を調べます。
 ④海底堆積物
 海底表層に沈積した堆積物中のMPをチェックします。海底には思った以上にプラごみや空き瓶空き缶が落ちており、水深1200mの海底では二槽式洗濯機も観察されています。(※図3)

 私どもはプラスチックの専門家ではないため、海域における観測および定量分析については当大学で、定性分析(起源の把握)は県の工業試験場やJAMSTECで行う予定です。「環境」と一言で言いますが、環境には沢山の分野の要素や社会的背景が複雑に入組んだシステムが考えられます。またそれらの観察法も確立されているわけではありません。そのため、多くの機関と連携する事で、確実な成果の出るよう取組んでいます。

2.環境教育プログラムの実装(※図4)
 東海大学海洋学部・海洋科学博物館・JAMSETCの3つの機関が、調査結果を基に、静岡市内の小学校を対象に出前授業・実験を行いながら、プラごみおよびMPに対する関心が広がるように静岡発の海洋環境教育をしています。

 プラスチックは「錆びない・腐らない」という便利な特性を持つことから、私たちの生活に無くてはならない物となっています。しかし、分解されないこの特性が徐々に私たちを苦しめ始めているのです。プラごみをこれ以上増やさない方向に考えなければいけません。そのためには、レジ袋や市のごみ袋をバイオプラスチックに変えていくなどの取組みが必要です。また、今後チューサイのようなリサイクル関連会社の存在が、いっそう重要になってくると思います。道ばたに落ちているごみも最終的には海へ移動して溜まる可能性が高いということを知ってほしいと思います。                     
(敬称略)             

ミズウオの胃袋の中から出てきたMP 三保半島先端部および清水港側でのMP抽出実験 相模湾水深1200mの海底で発見された洗濯機 蒲原第二小学校で行ったミズウオ解剖実験 東日本大震災の津波による地層

(取材者:平成28年入社 総務部 広報担当 日高)